リストさんの愛

ドイツ・バイロイト手記
10 /18 2014
バイロイト手記・第3弾

フランツ・リストのお墓に辿り着きました。


今回は祝祭劇場でのお仕事でしたので、近くにあるとはいえ、
自力でお墓参りする時間は無いかなぁ、、、あったらいいなぁ・・・と思っていました。

「あ、リストのお墓、この辺りですけど、小ノ澤さん行きますか?!」
と、運転しながら伊東先生が仰ったのです!


この時点で既に泣きそうでした。


墓地に辿り着き、余りの広さに一体リストはどこにいるのかと彷徨いました。
その時、墓地内にある教会の鐘が鳴り出しました。

棺を運ぶ参列者がゆっくりと歩いています。
どうやら、葬儀が終わり、これから埋葬というところでした。

何故か彼らと並走して歩くことになりました。
その間も鐘が鳴り続けています。


ふと、伊東先生が立ち止まり、笑顔で頷きながら・・・


     PicCollage (8)


リストさんとのご対面です。


同行のスタッフさんもいらしたので、必死で堪えたのですが
涙が止めどなく溢れだしてきて、どうすることも出来ませんでした。

音楽家にとって、作曲家のお墓や生地に出向くことは、本当に大切なこと。
日頃自分が音楽をさせて頂けることへの感謝。
素晴らしい作品を残して下さったことへの感謝。

孤独から救って下さることへの感謝。

もうとにかく、愛です。愛しかありません。


当時、短命の作曲家が多い中で、リストさんは享年74歳。
とても長く生きた方です。
超絶技巧ピアニストとして、作曲家として教育者として、大成しました。
その反面、36歳でピアニストとしての活動を辞め、その後は慈善活動として演奏し、
救済事業に寄付をしていました。
たくさんの生徒を持ち、無償で指導していました。
50歳を過ぎる頃には、修道院に入り、カトリックの僧侶になります。



リストさんの包容力を、作品からではなく、
実際に体に触れる空気で感じ取りました。

鐘は、ずっと鳴り続けていました。


クラシック音楽。
西洋の音楽。
時代は200年前。


この便利で平和な時代に生まれた、日本人の自分。

なんの接点もないのに、作品を通して、いつも繋がることができるんです。
なんの接点もないのに、どうしてもその時代のその音楽に、心を奪われて仕方ないのです


鳴り続く鐘の音が、今でも耳に優しく残っています。

ワーグナーと、リストと、コジマの関係。

ドイツ・バイロイト手記
10 /15 2014
バイロイト手記・第2弾です。

バイロイト祝祭劇場からほど近く、フランツ・リストが息を引き取った家があります。
こちらはあくまでもリストの家ではなく、(リスト最晩年の家はワイマールにある)
フレーリッヒ家の住居だそうで、現在、リスト博物館になっています。

リストがワーグナーの死後、バイロイト音楽祭の総監督になった娘コジマを見守るべく
この地を訪れた際に、このお宅に滞在したんですね。

自分の家で最期を迎えられなかったのか…と、可哀想に思いました。

PicCollage (5)    PicCollage (6)

道を挟んですぐお隣には、リストの娘・コジマが、夫であるワーグナーと住んでいた
ヴァンフリート荘があります。
そう!ワーグナーはリストの娘さんと結婚したのです^^
残念ながら、こちらは修復工事中で中には入れませんでした。
館の前には、何故かワーグナーではなくコジマ像が!!妻強し。


そうそう思ったんですが、リストは何故、娘夫婦の家に滞在しなかったのか・・・

右の写真、一番下のパノラマ写真をご覧ください。
左のベージュの家が、ワーグナーとコジマのお宅。
右の蔦の絡まる家が、リストが滞在したお宅。

ね、こんなに近くに(笑

リストの娘・コジマは、リストの弟子である指揮者・ピアニストのハンス・フォン・ビューローと結婚。
そんなコジマは、なんとワーグナーと不倫状態に・・・

元々、ワーグナーとリストは友人でした。

コジマは、リストの反対を押し切って、ワーグナーと一緒になったんです。
リストからすれば、自分の娘が自分の友人と。。。嫌ですよね^^;
そういった諸々もあって、独特の距離感を保っていたのかな??なんて勝手に想像。

妄想ともいう。

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ご配慮を頂き、館内のピアノを弾かせて頂きました。
このピアノで、ワーグナーは「パルジファル」を作ったそうです!
館内にはリストの私物やデスマスクなどが並んでいます。
リストが履いていたサンダルや、使っていたトランプや、直筆の文字を眺めつつ・・・
こうやって確かに生きていた証のようなものに出会うと、
普段作品に触れて感じるイメージとはまた違った、何というか愛おしさが生まれてくる。

人間に会える。

作曲家の生きた土地を巡ること、私は大好きです。
   
      PicCollage (7)

歩いてすぐの自宅のお庭に、ワーグナーとコジマが眠るお墓がありました。
なんと、飼っていたワンちゃんのお墓も隣にそっとありました^^
今回の感謝をお伝えしました。

リストさんのお墓はというと・・・
バイロイト市立墓地にあります。
次の手記に残します。

バイロイトでの夢のような現実を振り返る。

ドイツ・バイロイト手記
10 /11 2014
バイロイト手記を残したいと思います!
まずは、いったい何をしにドイツに??という説明から^^!

場所は、ドイツ・バイロイト祝祭劇場。
この劇場は、リヒャルト・ワーグナーが、自分自身の楽劇を上演するために設計・建築。
自分の理想とするままに、自作の楽劇を上演する場所なのです。

そう、正に!ワーグナー劇場!! 
詳細は→Wikipedia

日頃、演奏でご一緒させて頂いております、伊東乾先生。
今回は、その東京大学・伊東乾研究室の、バイロイト祝祭劇場での音響測定でした。

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この劇場でいったい何をしたのか?と言いますと・・・

ワーグナーが求めた音(歌声)が、
演奏空間にどのように響き渡り、
どのように人間の耳に届き、
脳感知するのか・・・
特殊な6軸マイクロホンで収録→測定。



ワーグナーの楽譜には、『ト書き』(演出事項や、歌手の立ち位置)があります。
昨今の演出では、このト書きに厳密に基づいて上演されることは殆ど無いそうです。
結局、本来ワーグナーが追求していた響きでは無い・・・

そこに、伊東先生は着目された。

ワーグナーの 『ト書き』 にある立ち位置で
歌手が歌います。


PicCollage (1)   PicCollage (2)


9月20日~29日の間、劇場内にいたのは、リハーサルを含め5日間。
受付のマダムに「Guten morgen^^♪」の顔パスで入れることに感動。。。

超一流にしか立つことを許されないこの場に、朝から晩まで自分がいること.。
一流歌手の稽古で使用されている楽屋・練習室のピアノを、
1日中自由に弾かせて頂けること。
劇場のオケピット内のピアノで、自分が弾くこと!!!
この歴史ある劇場に、自分の音が確かに響き渡ること!!!!!!

全てが夢のような現実でした。

もう全身全霊で、劇場に漂う一流の空気の厳しさに吞まれながら、
余りに寒いバイロイトと対照的な我が体内の熱さに朦朧としながらも、
決して冷静さを失わず、演奏することの喜びを味わっていました。

PicCollage (3)   PicCollage (4)


写真左上・日本から同行したイゾルデ昌子様
左中央・奈落の底でヴォータンに扮したフォルケさんと、ブリュンヒルデを熱唱したハイケさん!
左下・現地の歌手と演出家のルッツさん
右下・左は指揮者・総監督である伊東乾先生


ここからは個人的な感想。

「ニーベルングの指輪」最終章「神々の黄昏」
本当の本当にラストの曲である「ブリュンヒルデの自己犠牲」からの終結部。
ハイケの声と共に、劇場全体に自分の音が響いてビリビリしていました。
何度も収録したので、何度も弾きました!
正に自己犠牲!!!やりきりました!!感無量><!!!

そして、収録最終日。

「トリスタンとイゾルデ」より最後のアリア「愛の死」
伊東先生にとっても、この劇場での収録は最後になるそうで、色々な思いが伝わってきました。
この貴重な時に自らが演奏することを強く意識した時、急に異様な睡魔に襲われて、、、
鍵盤を目の前にして、座っているのにクラクラするような。。。
生きているのに死んでいるような

劇場にある一流の空気の厳しさが、一段と押し寄せてきて、潰されそうでした。

突き抜けて超えていく、宇宙まで・・・

正に、このアリアを歌うイゾルデの心境そのものだったのかもしれません。
私と歌手を試すかのような空気でした。
この印象は、後で歌手と話して完全に一致していたので、ふたりで驚きを隠せませんでした。
前日のブリュンヒルデの時には無かった感覚でしたので、ある意味特別だったのだと。

劇場内での手記はこの辺りにして^^
次の手記にはワーグナーさんと、リストさんへの感謝のお墓参りの模様を。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。

飛行機から

ドイツ・バイロイト手記
09 /20 2014
今からドイツ バイロイトに行って参ります!
29日に戻ります!


~~追記~~

無事に帰国しております!!
たくさんの素晴らしい経験をして参りました。
整理して、後日ブログにアップしますね^^

小ノ澤 幸穂

小ノ澤 幸穂 Yukiho Onozawa

東京音楽大学付属高等学校を経て、東京音楽大学ピアノ科卒業。在学中、板橋区クラシックオーディション合格。第5回ヤングアーチストピアノコンクール奨励賞受賞。第30回国際芸術連盟新人オーディション合格。コンセール・ヴィヴァン新人オーディション合格。2006年、ポーランド国立ショパン音楽大学マスタークラスにてピオトル・パレチニ氏に師事。ディプロマ取得。2010年、及川音楽事務所第17回新人オーディション優秀新人賞受賞。2012年、音楽の友ホールにてソロリサイタル「音の先にあるもの」を開催。2013年より東京大学大学院情報学環・作曲指揮研究室にて演奏助手を務め、ドイツ・バイロイト祝祭劇場での音響収録や、初演作品や現代音楽の演奏に携わる。

現在、ソロリサイタルの他、アンサンブルでの活動も多く、声楽家・ヴァイオリニストなど多数のアーティストに招聘され共演、CD録音やリサイタルでの伴奏を務める他、オペラ公演ではオケ中ピアニストとして携わるなど活動は多岐に渡る。また近年、クラシック音楽を身近に広めることを目的に、トークコンサートをプロデュース。

これまでに、佐川草子、大野真嗣各氏に師事。日本クラシック音楽コンクール審査員。板橋区演奏家協会会員。及川音楽事務所所属。東京大学大学院情報学環作曲指揮研究室演奏助手。

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