そもそもロシア奏法って?「従来の奏法との違い」「誤解された脱力」「本当の重力奏法」

奏法についてのお話
03 /27 2017
最近、生徒さんを教えていて色々気が付いたことがあり、それがある程度まで膨れ上がってきましたので、今年度の締めとして、ここに報告します(笑)今現在習っている方はもちろん、「ロシア奏法・重力奏法」というワードからこのブログをご覧になっている方も、是非ご一読頂ければと思います。と同時に、文章で記すことの限界も感じています。本やブログなどの文字情報の通り真似てみたとしても、残念ながら推測ベースであることも、レッスンの中で明らかになっています。実際にこの奏法で演奏しているピアニストやピアノ教師の丁寧な指導の下、自ら体感、実感し、継続することが全てです。


♦ロシア奏法(重力奏法)とは♦
多くの一流ピアニストが身に着けている演奏法です。(ロシアの作品のみを弾くための奏法ではありません。そもそものピアノの弾き方・技術です。)身体にとって自然で、かつ合理的な骨の動きと、それを支える筋肉を使う演奏法です。レガートを基本とした美しく歌うような音が特徴です。コントロールの利いた繊細なタッチで、豊かで深い響き、遠くまで届く研ぎ澄まされたピアニッシモ、多様な音色を生み出す奏法です。ホロヴィッツ、アルゲリッチ、プレトニョフ、ソコロフ、ガブリロフ、ダン・タイ・ソン、キーシン、ラン・ラン、トリフォノフなど多くの一流ピアニストがこの奏法です。(国籍は関係ありません)


♦従来の奏法との違い♦
従来の日本の音楽教育現場に流通している「指弾き」(ハイフィンガー)は、指の関節を固めて、まず指を持ち上げてから落とすという弾き方です。出てくる音の特徴としては、とても硬い音、そして音色の変化がありません。この弾き方は、指の運動量が異常に多く、指に頼った「指主体」の弾き方です。人によっては指が弱い、回らないと指摘を受け、自分は技術がないんだと思ってしまったり、長時間無理な練習をして故障を招くこともあるのです。

対して、レッスンでお伝えしている ロシア奏法は、指を持ち上げる筋肉「伸筋」を使わず、物をつかむときに使う「屈筋」で弾く奏法です。この奏法は、上腕の重さを利用した重力奏法にも基づいています。指の上げ下げを行わないので、結果として指の運動量は軽減されます。とても楽で、疲れず、まるで弾いていないような感覚になります。従来の弾き方と比べ、指が安定します。細かい音が流麗にクリアに弾け、なおかつ、レガートで歌う響きや音色のコントラストをつけることができるのです!


♦脱力の間違った解釈♦
ピアノの教育現場では「脱力」が永遠のテーマとされています。最も大切なことは、「どこを脱力するか」にあるのですが、、、レッスンに来る生徒さんの多くが、間違った場所を脱力をしている事に気が付きました。(ここでの脱力とは「ピアノを弾く上で有効に働く脱力」ということです。)

例えばとして、

1.手首を脱力し、指の関節を固めて指の上げ下げで弾いている状態⇒鍵盤を押し込んでしまう⇒響きが潰れます。詰まったような音になりますし、全く表情が付きません。音色のコントロールも不可能です。

2.手全体を脱力して弾いている状態⇒鍵盤の押し込みはありませんが、キースポット(鍵盤の深さ1センチの中にある音が鳴るスポット)を捉えられずに、音が浮き上がってしまいます。指と指の隙間から音が漏れていくようになり、音の密度が低く、芯の無い浮いた音に聞こえます。


正解は、支えと脱力の関係にあります。
では、その「支え」とはどこか?どこを「脱力」するのか? (「支え」は緊張や固定とは違いますよ!)


♦本当の重力奏法とは♦
重力なんだから、とにかく重さをのせればいいんだな!というのは間違いです。鍵盤には自動的に戻ってくる浮力があります。その浮力を利用して弾くのです。
『鍵盤を押し込まず、しかし、浮き上がらずに弾く』わけですが、これを成すには、上に記した『支えと脱力』のテクニックが必要です。

インナーマッスルを使います。中でも手の安定を目指すには《手のひらの筋肉》と《前腕の内側の腱の支え》が必要です。この《屈筋と腱》が育つと、手が安定し、指の繊細なコントロールが可能になっていきます。この安定により腕の重みを支えるのです。「上腕の重みを自然に落としつつ、前腕の下側と手の中で支えているという状態」=「脱力と支えの関係」 これこそが、本当の重力奏法です。


♦耳の意識♦
そして、これらのことと同時に、「耳の意識」を変えていきます。自分の出す音全てに耳を澄まし、耳で音を追っていく習慣をつけます。身体のコントロールと、耳をどう使うかは、常にセット。少しづつ使うべき筋肉や腱が発達し、音色が変わっていく段階で、耳もそれを追い求め変化をしていきます。不思議なことに、耳に意識が行くと、身体の無理な緊張が解け、いわゆる「ピアノ演奏にとって有効な脱力」が成功するのです!

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奏法について触れている過去の記事を、ひとつのカテゴリーにまとめました。
より細かく、詳細に書いています。⇒奏法についてのお話

小ノ澤 幸穂

小ノ澤 幸穂 Yukiho Onozawa

東京音楽大学付属高等学校を経て、東京音楽大学ピアノ科卒業。在学中、板橋区クラシックオーディション合格。第5回ヤングアーチストピアノコンクール奨励賞受賞。第30回国際芸術連盟新人オーディション合格。コンセール・ヴィヴァン新人オーディション合格。2006年、ポーランド国立ショパン音楽大学マスタークラスにてピオトル・パレチニ氏に師事。ディプロマ取得。2010年、及川音楽事務所第17回新人オーディション優秀新人賞受賞。2012年、音楽の友ホールにてソロリサイタル「音の先にあるもの」を開催。2013年より東京大学大学院情報学環・作曲指揮研究室にて演奏助手を務め、ドイツ・バイロイト祝祭劇場での音響収録や、初演作品や現代音楽の演奏に携わる。

現在、ソロリサイタルの他、アンサンブルでの活動も多く、声楽家・ヴァイオリニストなど多数のアーティストに招聘され共演、CD録音やリサイタルでの伴奏を務める他、オペラ公演ではオケ中ピアニストとして携わるなど活動は多岐に渡る。また近年、クラシック音楽を身近に広めることを目的に、トークコンサートをプロデュース。

これまでに、佐川草子、大野真嗣各氏に師事。日本クラシック音楽コンクール審査員。板橋区演奏家協会会員。及川音楽事務所所属。東京大学大学院情報学環作曲指揮研究室演奏助手。

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